変形性股関節症

手術法によって脱臼リスクが異なる

術後の生活での脱臼が心配?

人工股関節手術には、いくつかの手術方法があり、脱臼率は手術方法によって変わります。

一生に何度もない手術ですので、ご自身に施す手術はどういう手法のものか、よく理解した上で手術を受けてください。

 

脱臼はどうして起きるの?

脱臼は、無理な動きをして、大腿骨の一部が骨盤側に当たり負荷がかかることで(下図の青矢印)、人工関節の頭(大腿骨の骨頭・下図のオレンジ色部分)がカップの中(下図の水色部分)から押し出されて外に飛び出すことで生じます。

股関節脱臼の仕組み

手術方法によって脱臼率が異なる

人工股関節手術の仕方は、大きく分けると、前方系アプローチ後方系アプローチの2種類があります。前から手術するか、後ろ(もしくは側方)から手術するかの違いです。

手術の仕方は、行う医師によって異なります。どのような手術があるのか、簡単で構いませんので、頭に入れておきましょう。

 

手術方法の違い

後方系アプローチ

日本では、後方系アプローチが古くから行われてきました。そのため、このアプローチを行う医師は多く、病院も探しやすいでしょう。

後方系アプローチは、脱臼に深く関係のある筋肉を大きく切って手術します。

もし、周りに助けてくれる人がいない状況で脱臼が生じてしまうと、場合によっては、誰かが通りかかるまでその場から動けないという状況になりかねません。

それでは、人工股関節を入れると脱臼リスクと一生付き合っていかなくてはならないのでしょうか? 実は、脱臼のリスクは手術方法によって大きく異なります。

一般的に、前方系アプローチの脱臼率は0~2.2%で、後方系アプローチの脱臼率は1~9.5%と言われ、後方系アプローチの方が脱臼リスクが高いことが知られています。

前方系アプローチと後方系アプローチの2種類の手術方法の大きな違いは、「筋肉や腱を切ってしまうかどうか」

いかに筋肉を切らずに関節へのダメージを減らして手術を行うかが、脱臼防止のために大切なことなのです。

 

前方系アプローチ

前方(お腹側)から手術をする手法を、総じて前方系アプローチと言います。脱臼に深い関わりのある筋肉を切ってしまう後方系アプローチに比べ、患者さんの負担が少なく、脱臼リスクがより低い手法です。

前方系アプローチは、前方アプローチと前外側アプローチという方法に分けられます。前外側アプローチは、さらに、横向きに寝て行う方法と仰向けに寝て行う方法がありますが、仰向けで行うものを仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)と言います。

仰臥位手術でより正確に

仰臥位(あお向け)での手術にこだわる理由は、手術中に自分が設置した人工物の状況をリアルタイムに確認できるからです。術中に、人工関節の設置状況を確認しながらできるのが、仰臥位手術の最大のメリットです。これにより人工股関節の設置ミスを、限りなく減らすことが可能となります。

これにより、すべての患者さんに対して、筋肉や腱を全く切らずに手術することを目指しています。

正常組織へのダメージを最小限にすることで脱臼率が低くなるだけでなく、筋力の回復も早まります。そうすることで、筋力の回復が早く、術後10日前後での自宅復帰が可能です。

これらが、仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)ならではの利点です。この方法により、脱臼リスクの軽減に満足出来るようになりました。

 

術後の禁止行為はナシ

病院によっては脱臼を予防するために正座を禁止したり、靴下を自分で履かないように指導したりすることがあります。

それらは手術の方法(いかに筋肉や腱を切らずに手術を行うか)で解決できる問題であります。仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)手術を施した患者さんには、禁止している肢位や行為をもうける必要がありません。

軽いスポーツ、例えばウォーキングや軽いジョギング、ゴルフ・水泳・卓球・軽登山・ボウリングなどは許可しています。人と人が激しくぶつかり合うスポーツは脱臼のみならず、骨折の危険性があるため、控えていただくように指導しています。

前方系アプローチ、なかでも仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)は脱臼の確率が低く、術後の生活に制限がないなどの患者さんにとっては良いことづくしである一方で、どの手術方法を行っているかは医師によって異なります

仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)は、どこの施設でも行っている手術ではなく、医師による技術格差が生じやすい方法でもあります。この手術で症例数の多い医師は、それほどたくさんいないので自分が受ける手術方法に関しては、主治医とよく相談したうえで決定することをおすすめします。

人工股関節の寿命は30~40年?

全国で講演をしていると、「人工股関節の寿命は20年ぐらい?」「またやり替えないといけない?」などの質問を受けることがあります。現在の人工股関節の寿命は、昔に比べ、格段に延びています。人工股関節の登場から約50年が経過し、改良が重ねられ、現在の機種は、素材の耐久性が飛躍的に上がっています。

2000年頃に起こった技術革新により、それ以降の機種に関しては耐久性が格段に進歩しました。その導入からまだ20年程度しか経過していませんが、患者さんの94%以上が問題なく使えていることがわかっています。

今入れている人工股関節は、30~40年後も問題なく使えている可能性が高いと考えられます。つまり、60歳以上の患者さんであれば、100歳まで使用可能となる時代が近づいてきています。

 

 

脱臼リスクが少ない手術方法、仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)を検討している方は、どんなことでもご相談に乗りますので、ご連絡ください。板橋中央総合病院の整形外科診療部長・久留医師がご回答致します。

 

術後のリハビリと日常生活 術後のリハビリ リハビリ経過の例 入院期間は、患者さんにより個人差がありますが、おおよそ術後10日前後。 手術当日...

 

   戻る  

ABOUT ME
板橋中央総合病院 整形外科 診療部長
久留 隆史
皆様が股関節の痛みや脱臼の不安感に悩まされることなく、日常生活を送る手助けができれば幸いです。気になることがあればお気軽にご相談ください。