人工股関節手術・置換術
変形性股関節症が末期まで進行した場合、人工股関節置換術が最も推奨される手術方法です。簡単に言うと、股関節の関節側を人工物に置き換える手術です。脚を動かすときに回転する部分が人工物に置き換えられるため、痛みを感じることがなくスムーズに動きます。
手術後の後遺症は?
では、手術後の後遺症や合併症などはないのでしょうか?
どんな手術でも100%安全で結果が約束されたものではありません。起こって欲しくはないのですが、時に起こりうる不具合を合併症と言います。
人工股関節置換術は、術後の経過がとても良い手術と言われています。今までの痛みがほぼ消えて、どちらの脚が痛かったかすら忘れてしまうこともしばしば。
しかし、その中でも比較的頻度が高く、困った合併症が「脱臼」です。
人工股関節の特徴として、大腿骨の頭の部分が少し小さくなります。正常は46~48mm程度のものが、28~32mm程度とサイズが小さくなるので、あまり大きく股関節を動かし過ぎると脱臼してしまいます。手術後は脱臼しない動き方を意識しなければなりません。
しかし実は、脱臼率は手術アプローチによって変わります。手術の仕方を選べば、脱臼を避けることができます。
脱臼はどうして起きるの?
脱臼は、無理な動きをして、大腿骨の一部が骨盤側に当たり負荷がかかることで(下図の青矢印)、人工関節の頭(大腿骨の骨頭・下図のオレンジ色部分)がカップの中(下図の水色部分)から押し出されて外に飛び出すことで生じます。
手術アプローチによって脱臼率が異なる
人工股関節置換術の仕方は、大きく分けると、前方系アプローチと後方系アプローチの2種類があります。前から手術するか、後ろ(もしくは側方)から手術するかの違いです。
手術の仕方は、行う医師によって異なります。どのような手術があるのか、簡単で構いませんので、頭に入れておきましょう。
人工股関節手術アプローチの違い
後方系アプローチ
日本では、後方系アプローチが古くから行われてきました。そのため、このアプローチを行う医師は多く、病院も探しやすいでしょう。
後方系アプローチは、脱臼に深く関係のある筋肉を大きく切って手術します。
もし、周りに助けてくれる人がいない状況で生じてしまうと、場合によっては、誰かが通りかかるまでその場から動けないという状況になりかねません。
それでは、人工股関節を入れると脱臼リスクと一生付き合っていかなくてはならないのでしょうか? 実は、脱臼のリスクは手術アプローチによって大きく異なります。
一般的に、前方系アプローチの脱臼率は0~1.0%で、後方系アプローチの脱臼率は1~9.5%と言われ、後方系アプローチの方が脱臼リスクが高いことが知られています。
前方系アプローチと後方系アプローチの2種類の手術方法の大きな違いは、「筋肉や腱を切ってしまうかどうか」
いかに筋肉を切らずに関節へのダメージを減らして手術を行うかが、脱臼防止のために大切なことなのです。
前方系アプローチ
前方(お腹側)から手術をする手法を、総じて前方系アプローチと言います。脱臼に深い関わりのある筋肉を切ってしまう後方系アプローチに比べ、患者さんの負担が少なく、脱臼リスクがより低い手法です。
では前方系のアプローチで行っていればすべて脱臼率は低いのでし
たとえ前方系アプローチを選択していても、
いかに筋肉や腱を切らずに手術を行えるかが最も重要な点で
前方系アプローチは、前方アプローチと前外側アプローチという方法に分けられます。前外側アプローチは、さらに、横向きに寝て行う方法と仰向けに寝て行う方法がありますが、仰向けで行うものを仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)と言います。
仰臥位手術でより正確に
仰臥位(あお向け)での手術にこだわる理由は、手術中にX線透視
これにより、すべての患者さんに対して、筋肉や腱を全く切らずに手術することを目指しています。
正常組織へのダメージを最小限にすることで脱臼率が低くなるだけでなく、筋力の回復も早まります。そうすることで、筋力の回復が早く、術後10日前後での自宅復帰が可能です。
これらが、仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)ならではの利点です。この方法により、脱臼リスクの軽減に満足出来るようになりました。
脱臼リスクが少ない手術方法、仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)を検討している方は、ご相談に乗りますので、ご連絡ください。人工股関節専門ドクター・久留隆史医師がご回答致します。板橋中央総合病院にて外来受診可能です。