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筋腱完全温存手技とは

切離した筋肉や腱は完全に元通りにはならない

股関節周囲には大・中・小殿筋、短外旋筋群からなる多くの筋肉群が存在します。
人工股関節設置の際に、通常はそれらの筋肉の一部を切離して関節内に進入いたします。
しかし、一度切離した筋肉や腱は、完全に元通りに戻ることはありません。

うまくいけば瘢痕(はんこん:傷の治った跡)を形成しつつも再接着して、正常時と同様に機能することもありますが、多くは不完全な再接着となります。

そうすると、筋力低下や筋肉による制動性(動きを止める作用)の低下が生じるため、術後の脱臼という合併症を生じてしまいます。

筋腱完全温存手術の登場

筋腱完全温存手術とは、文字通りそれらの股関節周囲筋を全く切離することなく、筋肉と筋肉の間から関節内に進入する手術を指します。


掻き分けるように筋肉と筋肉の間から進入する

筋間進入で筋肉に対するダメージを最小限にするため、術後の早期回復を早めるとともに脱臼という合併症を減らすことに有利となります。

近年では、筋肉の完全温存のみならず、その深層にある関節包靭帯の温存手技にまで尽力することで、更なる関節の安定性が獲得できるようになっています。

手術技術の修練が必要な手技

では前方系のアプローチで行っていれば筋腱完全温存手術が可能なのでしょうか?

たとえ前方系アプローチを選択していても、筋肉や腱を切って手術を行っていればそれは後方アプローチと変わらないと言えます。

よく後方アプローチでも前方アプローチでも脱臼率はあまり変わらないとおっしゃる方がいらっしゃいますが、筋肉を切って行った前方アプローチと比較してのお話ではないかと感じております。

筋腱完全温存手術を達成するためには、それだけ手術技術の修練が必要となります。

私どもはその手術手技のコツや陥りやすい落とし穴について詳細に記載した専門書(筋腱完全温存AL Supine THAの手術手技)を2020年に発刊いたしました。

誰でもどこでも、より良い手術を受ける時代が来ることを希望して、この学術書では、手術手技のエッセンスを包み隠さず記載しました。全国にまで波及するには、まだ何年もかかるでしょうが、その一助となれば幸いです。

おかげさまで、多数の購読者(整形外科医師)から嬉しい意見を頂いております。さらに、他病院から医師の手術見学も受け付けており、こちらも高評価を頂いております。

筋腱完全温存手技が広く普及することで、人工股関節手術を受けられる患者さんにとって福音となることを願っております。

脱臼リスクが少ない手術方法、仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)を検討している方は、ご相談に乗りますので、ご連絡ください。人工股関節専門ドクター・久留隆史医師がご回答致します。板橋中央総合病院にて外来受診可能です。