人工股関節の寿命は30~40年?
健康講座などで講演をしていると、「人工股関節の寿命は20年ぐらい?」「またやり替えないといけない?」などの質問を受けることがあります。最新の人工股関節の寿命は、昔に比べ、格段に延びています。人工股関節の登場から約50年が経過し、改良が重ねられ、現在の機種は、素材の耐久性が飛躍的に上がっています。
2000年頃に起こった技術革新により、それ以降の機種に関しては長期の耐久性が格段に進歩しました。わが国に導入されてからはまだ20数年程度しか経過していませんが、欧米ではすでに30年以上の長期の成績が報告されています。最近報告された最も長期の成績では術後32年を経過した患者さんのうち、人工関節がゆるんで再手術を必要とした患者さんはわずかに1%であったと報告されています。
今入れている人工股関節は、30~40年後にも問題なく使えていることが期待されています。つまり、60歳以上の患者さんであれば、100歳まで使用可能となる時代が近づいてきています。
人工股関節置換術はいつ受けるのが良い?
厚生労働省によると2020年の日本人の平均寿命は女性87歳、男性81歳でした。一方で健康寿命(寝たきりや認知症がなく、健康的に生活できる間の年齢)は女性74歳、男性71歳と言われています。
仮に人工股関節の耐用年数が30年間は確保できていると仮定しますと、女性は44歳、男性は41歳以上であれば一回の手術で、健康的な人生を送れる期間は十分にカバー出来ると言えます。
年齢のせいで手術を躊躇し、痛みを我慢しながら生活されている患者さんにとっては手術を考慮する一つの判断材料となるでしょう。
人工股関節手術をいつ受けるのが良いのか?というご質問を受けることがよくございます。その際には「痛みから開放されたいと思ったときがその時期です。夜に痛みで目が覚める、買い物に行けない、バス停ひとつ分が歩けないなどがひとつの目安になるでしょう」とお伝えしています。
脱臼リスクが少ない手術方法、仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)を検討している方は、ご相談に乗りますので、ご連絡ください。人工股関節専門ドクター・久留隆史医師がご回答致します。板橋中央総合病院にて外来受診可能です。