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長嶋一茂さんの股関節手術の特徴と利点

2024年11月29日(金)に放送されたテレビ朝日系バラエティー番組「ザワつく!金曜日」で、長嶋一茂さんの人工股関節手術(人工股関節置換術)に密着した回が放送されていました。

そのなかで、長嶋一茂さんの病名は変形性股関節症で24時間続く痛みに我慢の限界がきて手術を決断したと報じられていました。

変形性股関節症は治る疾患ではありません。人によって進行の速度は違いますが、確実に進行する疾患ですので一茂さんのように1か月程度であっという間に痛みが我慢できない状況になることもあります。

今回一茂さんが選択された人工股関節の手術方法は、仰臥位前外側アプローチで行う人工股関節手術(ALS THA)です。この方法は、わたくしが行う手術方法と同じであります。特徴は前方から筋肉と筋肉の間から人工関節を設置することが可能で、すなわち筋肉を切ることなく温存しつつ手術が可能な手術方法となります。

しかし、手術難易度は当然高くなりますので、医師の技術力が問われる手術方法であります。この術式を希望される患者さんは、医師の技量の見極めが大切となるでしょう。特に長嶋一茂さんのような筋骨隆々な患者さんでは、筋肉量も多いので筋肉間から人工関節を設置するのは大変な作業となることが予想されます。番組内でも大腿骨頭が大きいとか骨を切除する時に使用した電動ノコギリが破損したりなどのトラブルがあったようです。

トラブルはあれどしっかりと上手に手術が完遂されたならばそれによるメリットも大きいわけで、筋力低下が少ないので回復も速く手術翌日にはすぐに歩く練習が可能となります。一茂さんは「20時間後には歩けるようになった」と放送されていましたが、私の経験では、ほぼすべての患者さんが一茂さんと同様に歩く練習が可能となります。

仰臥位前外側アプローチで行う人工股関節手術(ALS THA)によるさらに重要なメリットは、人工関節特有の困った合併症である「脱臼」が極端に少ないことです。どのような手術アプローチで行っても、関節の長期耐久性にはあまり差ありません。最新の人工股関節の長期耐久性は20~30年の実績が報告されていますので、年齢40歳以上であれば手術を躊躇する必要はないと考えています。

しかしながら、脱臼リスクは手術手技(手術方法)や医師の技量に大きく左右されます。今回放送された手術アプローチを、ちゃんと筋肉を温存しながら行えれば、脱臼リスクは極端に少ないと言えるでしょう。わたくしの経験では、脱臼率は0.1%以下となっております。すなわち、1000人に1人より少ない率と言えます。この結果は全く動作制限を行わずに得られた成績ですので、まったく姿勢を気にすることなく生活できるという安心感があります。そのため、高度な動きが要求されるスポーツへの復帰も可能となりますので、スポーツ愛好家の患者さんには朗報であると言えるでしょう。

→当院のスポーツ復帰の事例はこちら

入院日数は片側のみの手術で約9日間、両側同時手術でも16日間と短期間で済むこともメリットの一つと言えます。

変形性股関節症は治る疾患ではありません。しかし、人工股関節手術にて解決可能な疾患ですので悲観することなく治療に臨まれることをお勧めいたします。

長嶋一茂さんの受けた人工股関節手術と同じ、脱臼リスクが少ない手術方法・仰臥位前外側アプローチ(ALS THA)を検討している方は、ご相談に乗りますのでご連絡ください。人工股関節専門ドクター・久留隆史医師がご回答致します。板橋中央総合病院にて外来受診可能です。

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